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否定をやめた、その日のこと

前回リリースした「全く以て」以来、2年ぶりの新曲。この2年のあいだに、息子は園に通うようになり、わたしは突然ベイスターズファンになり、福岡で日本シリーズ観戦したり。ほんと、いろんなことがありました。
そんな中で、自己否定をやめようと書いたのが、この「ブラックペッパーと栗」
聴いてもらえると嬉しいです。
こちらよりどうぞ!

『ブラックペッパーと栗』

いつからか ステージが こわくって
まただ やらかした もう何度目だ
情けない 顔を うつした
快速が急ぐ 早送りして

一時停止 パンでも買いにいこうかな

もう だめだわ ここまでかな
いいよな もう いいよな
上出来さ よくやったよ
俺にしちゃ よくやったよ

おもい通りの 人生の中じゃ
きっと きっと 生まれない歌があった
寄り道にこそ イロドリがあるな あったな
いろんな顔が うかぶ

巻き戻せば どの顔も笑ってやがる

忘れちゃ だめだ
がむしゃらな 日々の中で
もらったものが こんなに
抱えきれないほど あるじゃないか
とっくに しあわせだった

悩むのもいい 悔やむのもいい だけど
じぶんでじぶんを 否定するのは やめた

それはもう やめました
可愛いじゃない だめなじぶん
それより 大好物の パン買ったから
明日が たのしみだな
たのしませて あげなきゃな
じぶんを

朝食に おいしいパンとスープを

Words and Music:けんいち
Vocal:けんいち
Electric guitar , Programming & Arranged:山田航平
Drum:池田しげのぶ
Mixed & Mastered:藤田敦

聴けないぜ!って方は、わたしのえっさほいさ作ったリリックムービー(ワンコーラス)で、全体を想像してくださいませ。

聴いてくれてありがとう。

リリースにあたって、楽曲解説も書いた。どっかにのってるはず。

その日の生放送で、ぼくの歌はみじめなまでに震え、裏返った。歌う前のトークコーナーからすでに、声はつっかえ、普通に話すことさえできなかった。
帰りの電車の中で考えた。「もう、やめよう」と。一度や二度のことじゃないんです。まったく声がでなくなることもある。このまま続けていれば、とんでもない事故をおこすかもしれない。ならもう…。
電車を降りて、パン屋に寄った。ブラックペッパーと栗のパンを買って、海まで足を延ばした。穏やかな海を見ながら、ふとおもった。「ああ、たのしかったなぁ」って。
ま、こうやって歌にしてるってことは、まだ続けてるんだけど。声がでなくなる時の心と体の変化に対策を講じながら。満足には歌えないんだけど、いつか歌えるようになると信じながら。
そんなじぶんを受けとめて、許して、なんなら抱きしめてあげたいな。そんな歌です。

てなわけで、このnoteでは
・自分の思考の変化、なぜ続けるに至ったのか
・楽曲の温度感と、自分の温度感を揃えるために
・これから
この辺りを書いていきたいとおもう。

否定やめる宣言

歌詞とメロディは、およそ2年前に書いたもの。

じぶんでじぶんを 否定するのは やめた
それはもう やめました

この時は、まだ願望でしかなかった。否定をやめたい自分の背中を押すため「もうやめました」と書いた。ようは、宣言である。

そうおもえた、きっかけがある。
一緒に曲を作っているコルクの佐渡島さんに、ライブやイベントで歌唱するたび、自分のパフォーマンスがいかに駄目で、こんなんじゃステージに立つ資格はない。なんて、くどくど言ってた。すると、佐渡島さんが言う。
「それ、けんいちさんが他人に同じように言いますか?きたがわ家(わたしのnoteのメンバーシップ。応援してくれる大切な人!)が、がんばってステージに立ったとして、その人に対して否定するようなこと言わないですよね?どうしてじぶんには言うんでしょうね?」

言わない。。。絶っ対言わない。
ステージに立っただけで拍手。泣いちゃう。むしろ褒めちぎる。いいと感じたことをめっちゃ伝える。
もしその人が今後続けていくのだとして、反省など口にして下を向いていようもんなら、すかさず言う。
「全然大丈夫やって!むしろ、ステージで気付けてる時点ですごいやん。改善していけるってことやん!のびるで〜。のびしろでかいで〜。打ち上げ行こ〜や〜うまいもん食べいこ〜や〜まつりじゃまつり〜!!」
である。

最低限、これだけのパフォーマンスはみせないと失格。人権なし。みたいな、ありもしないボーダーを引いてた。
「大切なもの」から2年前にリリースした「全く以て」
これまで書いて歌ってきたことって、むしろその逆。
いいんやて。それで。いいんやで。悩んで葛藤して情けなくおもったって。ううん、いいんやで。って。
なのに、じぶんはだめって、なに?
それこそ、これまで歌ってきたことと相反してるし、ぼくの歌に何か感じてくれたあなたへの裏切りともとれる。
歌が、うそになっていたのだ。

ぼくの中の変化

ツラツラと書いたものの、「否定しない」が身についたのはここ最近のこと。意識せずとも、否定しなくなったのは。

いつしか、否定は改善のためのヒントになった。短期間でいっきに変わるのはむずかしくとも、一回のライブでひとつ。またその次にひとつ。時に改善がうまくいかなくてもいい。次またトライ。
そのトライ、めっちゃ尊くない?

長期的に物事を考えるようになって、いろんなことが改善した。このリリースで、たくさんの人に聴いてもらえるようになるとも、3月のアルバムで環境が変わるとも、おもわない。人からの評価にモチベーションが揺らぐことが減った。曲を作り続けること、ひとつステージに立つと決意することで、ぼくという人間が、昨日気づけなかった何かに気付いたり、じぶんを肯定する要素になったり。それって売れることより、ぼくの人生にとってとても大切だ。

尊敬するベイスターズのピッチャーがこう言っていた。

50試合に投げたいという目標があれば、1試合で浮き沈みするのではなく、最後にこうなっておきたいという逆算でやった方がいい

森原康平選手

本当に、野球には学びがたっくさんだ。

楽曲の温度感、自分の温度感

問題はこの曲の落としどころ。
この歌詞、このメロディをぼくの歌声で歌うと、悲しいよりの歌に聴こえてしまう。その着地点の調整が必要不可欠だった。
今回はギター中心でいきたい。しかしアレンジできないし、どうすればいいか分からない。
そこで、友達の音楽プロデューサーに相談した。
「部屋でひとり、誰が聴くわけでもないギターをだらんと弾いてる。絶望してるでもなく。希望に満ちているでもなく。」そんなイメージを言葉にして擦り合わせた。
それで紹介してもらったのが、ギタリストで楽曲提供から劇伴作家までされている山田航平さん。面識もあり、アレンジを引き受けてくださった。(劇伴ってのは、映画やアニメのシーンに合わせて映像の背景に流す音楽のこと)

いやね、全体ももちろんやねんけど、サビの2個目のコード進行ばこーん変えてくださって、まじかっこよくなったんよ!
あとねあとね

「たのしませて あげなきゃな じぶんを」

好きなパンを買って、あしたに希望を置いておく。あしたに楽しみをつくるって、すごくいいなとおもうのね。たとえ、ほんの小さなよろこびでも。
そんなおもいが、この部分を足さなきゃ伝わんないかなとおもって、アレンジも完成した後やのに、追加したの。(山田さん、申し訳ない!)アカペラの歌だけポーンと送ったら、こうなってかえってきたん。え?山田さんぼくの気持ちめっちゃ理解してくれてる。って泣いた。劇伴作家もされてるからかな?やさしさかな?こういう引き立て方、曲の頭から最後までの展開、ほんといい。すき!

やめる、からはじまる

じぶん否定はやめたけれど、ソロライブは長らくやってない。
理由は、長時間歌える自信が持てないからだ。3月にアルバムがでるが、ライブを予定していない。それでも今年はイベント等に呼んでいただいて3回かな?人前で歌った。どれも短い出演時間だが、自分にとっては大きな挑戦だった。
少しずつ、ほんとに少しずつだが、歌えるようになってきている。体と慎重に話し合いながら、積み重ねていきたい。

そしてぼくが歌ってきたことに、誠実でありたい。この状態から、ステージで楽しく歌えるようにトライし続けることで、これまでの歌が、これからの歌が、ホンモノになる。最後にどうなっていても。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
この曲を皮切りに、1月2月とシングルを配信リリースをし、3月には9年ぶりのアルバムを配信リリースします。
1月の曲は打って変わってめっちゃ明るい楽曲!たのしみにしててもらえると、うれしいです!

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けんいち(Kenichi Kitagawa)
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